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2017年8月11日金曜日

この男、凶暴につき

THE VISIONドラマー三戸隆宏という男は、深夜0時から2時くらいまでが睡魔のピークになってしまう体質らしい。
確かに過去にも何度かそういったところに出くわしたことがある。

毎年フジロックに行くと、ヘッドライナーのライブを終え、余韻に浸りながら会場を散歩し、ゲート外にあるパレスオブワンダーという遊園地のような無料ゾーンで過ぎていく時間を惜しみながら、残り少ないフジロックタイムを楽しんで、最終バスに乗って帰るという流れなのだが、そう、この剛毛ドラマーにとっては、ちょうどその時間帯に眠気のピークが来てしまうという事である。

よって、バイク数台が球体の中で駆け巡ろうが、ほぼ全裸のダンサーがノリノリで踊ってようが、勢い全開期待のルーキーバンドのライブが始まろうが、彼は半目を閉じたまま、動こうとせず、僕らが帰ろうとするのをじっと待っているだけになる。ハチ公の様に。顔が犬顔だけに。

そしてそのピークが最高潮に達したとき、彼は「不機嫌になる」という必殺技を出して、しばし周りを困惑させるのである。

深夜1時、最終バスを待っていたとき、彼の体力は限りなく0に近く、まるでサナギのように動かなくなった。
バスに乗り込み、僕らはホテルに入った。
一緒に行った人のツテで、今年は綺麗なホテルに泊まることが出来たのだ。
そこにはなんと大浴場もあって、半日以上雨に打たれて冷える身体にとっては何よりも有難い。
僕は途中雨に打たれながら「帰ったら大浴場に入れる」という希望を思い浮かべて乗り切ったと言ってもいいほど、大浴場を楽しみにしていたのである。



深夜2時、剛毛は「俺、部屋のシャワーでいい」「大浴場は明日入る」と言い出した。

僕は驚愕したが、まぁそれは剛毛の勝手なので、「もったいねー」と軽く言って大浴場に向かおうとした。
すると剛毛は「じゃあ行くよ!😡」とキレ始めたのだ。

そう、ピークが来たのだ。
こうなると彼は手がつけられない。アウトレイジの北野武の様に凶暴になる。

洗面台にあった小さなシャンプーを持って外に出ようとした。

僕はすかさず「さすがにシャンプーは大浴場にあるんじゃねぇの?」と言った。

剛毛「じゃあ持ってかねぇよ!!😤」とその小さなシャンプーを投げ捨てて大浴場へ去っていった。

僕は引き止めて「部屋の鍵が一個しかないから、一番早く帰って来るやつが持っていこうよ、三戸くん長風呂だよね?」

剛毛「うるせぇ俺が鍵は持っていく!!(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾」

…長風呂で有名な彼が、僕が体を洗って湯船に入ろうとした頃にはもう大浴場から姿を消していました。

僕と剛毛の中学一年生からの20年に及ぶ友情は、シャンプーが大浴場にあるかないかで、儚くも温泉のお湯と一緒に流れて行きました。



次の朝、目を覚まして横を見ると、競馬中継を聴きながらニヤニヤした顔でスマホをいじる剛毛がいました。多分昨日の事など覚えていないのでしょう。
「おはよう!今のレース三連複一点で仕留めたよ!」

欲望って、人間って、怖い。と思いました。

加賀山

小沢健二さんのライブは、いい意味でストレートに名曲たちを連発してくれる最高のライブでした。あとlemon twigsが凄まじく良かったです。






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